青森Souls 佐々木 富美子さん
東京都江東区亀戸「青森Souls」店主
つがる市出身。五所川原での居酒屋経営の後、2018年に一念発起し「青森Souls」出店。青森県の味を首都圏の人々に届けている。飲食店経営の傍ら、ヘヴィメタルバンド「あっぷるめたる」のボーカルを務めるパワフルな店主。
今回は東京で活躍するつがる衆のインタビュー。
青森出身者が足しげく通う「青森Souls」、店主佐々木さんの思いを伺いました。
津軽弁もなるべくそのまま書き起こし、難しいものには括弧で訳をつけています。
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Q.東京に来たきっかけを教えてください
青森の味を知ってもらいたくて来ました。
東京で青森の「味(あず,あじ)」って知られてないんですよね、全然。この前来たお客さんも「青森ってりんご以外なにあるの?」みたいな。今でもそうなので。やっと六年目に入ってもそういうお客さんが新しく来る。
東京では今でもまだまだ知られてない食べ物があると思っていて。うちらもまだ青森の食べ物全部知ってるわけじゃないから、こっち側さ(に)来て知った食べ物もある。例えば風間浦のアンコウとか。ドンコとかそういう食い物も。あと「鮫すくめ」もそうだし。
五所川原の店は郷土料理屋じゃねがったから「鮫すくめ」も出していなかった。東京さ(東京に)来て自ら郷土料理を覚えてつくるまでの過程は大変だったね。
筆者:「鮫すくめ」、確かに青森の居酒屋では出ないですよね。
出ない。ほとんど(郷土料理は)出ないと思る(思う)よ。「人参の子和え*」だって通しさ(お通しに)出るくらいだろうし。青森でもつくってる人少なくなってる。絶やしたくないからね、郷土料理を。色んなものはもう青森の家でもつくってないと思る(思う)んで。核家族さ(に)なってるじゃないですか。それでも無くなってはもらいたくないという気持ちもある。
あとは身体のことを考えてそれを東京の人にも「発酵料理」として伝えていきたい。発酵文化は東京ではもてはやされてるけど、青森でつくっているものとは違うから、そういう違いも知ってもらいたい。
*人参の子和え…真鱈の子を人参や糸こんにゃくと和えた郷土料理。味は家庭により様々。
筆者:東京で青森の発酵料理は育つものですか?
難しいっす。何回も失敗してる。一番の失敗は「毛豆の漬け豆」。あれって本来は冬の間ずっと持たせないといけないわけじゃん。青森だば冬のながに車庫だのさ置いでで(冬の間は車庫に置いておいて)それでいいけど、東京だば一切無理だはんで、二日くらい常温さ(に)置いておいて、冷蔵庫さ(に)ストックしておくのがいい。
あとは「すしこ」。東京の人だば(だと)すしこ食えばみんな「うめ(美味い)」って言う。青森の人よりも好きだかもわかんないな(青森の人より好きかもしれないな)。こっちの人ってすっぱいものとか好きなの。だから鮫すくめも食べれば「うめ」って言うし。
Q.東京は亀戸で過ごして6年、東京と津軽での差はありますか?
亀戸の人はみんな親切だよ。大して青森県と変わらない。うん、みんなすげー親切だね。最初は東京だはんで(なので)そういうの無いべなと思ってたっきゃ全然(思っていたら全然)。最初のころは宣伝してけだり(くれたり)とか。
筆者:亀戸の人にも津軽弁で喋るんですか?
自分はね。でもちょっとは手加減する、ここまでは訛ってね(ない)(笑)。それで、どんどん喋ってれば訛ってくるはんで(訛ってくるから)、お客さん「うんうん」って聞いてるはんで分かってるんだべなって思ったっきゃ、あどから聞いたっきゃ全然分かってない(笑)(「うんうん」って聞いてるから分かってるんだろうなって思っていたら、あとから聞いたら全然分かってない(笑))。今だば慣れてきたお客さんだば(だと)、「もう一回しゃべって」「なんて言ったの?」と聞いてくれる。あとは姉がいれば姉が喋ったりとかね。姉は五所川原(つがる市隣接の市)で床屋やってて、お客さんも東京の人が多かったから、津軽弁あんまりしゃべってない。(五所川原は)東京の会社とか多いはんで。昔は東京の企業の社長なども転勤族で多かった。
Q.東京の暮らしで苦労したこととか、逆にこっちは楽だなと思うことはありますか?
東京は楽だよ。車ねぇのは面倒くさいけども、別になんも困ることは一切ないよ。で、人の目気にしなくていいじゃん。別にどった格好してあさいでも、どったことしてあさいでもね、なんもしゃべんねえじゃん(別にどんな格好して歩いても、どんなことして歩いても、何も言われないじゃん)。派手な格好とか、髪型も変わった風にしたりとか、車も変わったの乗ったりしてれば、青森の人ってみんな「わい!(わぁ!)」ってしゃべるじゃん。青森さいたときはそういう「目」あったけども、今は無いはんで、すごく有難い。
Q.逆につがるの方がいいなと思うことってありますか?
うーん、なんだろ……食い物?!東京のものはハッキリ言ってまずいね。
最初の短い期間は、野菜は「ま、いっか」って、東京で売ってるもの使っておくべって使ったこともあるわけ。でも何買ってもまぐねぇんだ(美味しくないんだ)。白菜買ってもきゅうり買ってもトマト買っても。
筆者:何の差なんですかね?
やっぱ気候の差だね。あと「土(つぢ)」。なんぼこの神奈川の野菜であれ千葉の野菜であれ、みんなうめって言うけど、やっぱり青森の野菜には負けると自分は思っている。お客さんみんな言う、「きゅうり全然違う」って。あとは白菜も。一番最初に鍋やったときに、東京出てきて長い青森県出身のおばさんが、「この白菜、どこの白菜だば?」って聞いてきてから「青森だ」と答えたら「んだべ!味違う。」って言ったね。
魚もだよ。うちは五所川原やつがる市から全部直送だけども、ホヤ食べてお客さんみんな違うって言う。青森県は多分市場から直接魚屋さ(に)来てるはんで、それでそっからうちさ(に)来てるから。ホヤは鮮度が持つのが短いんだと思う。だからホヤは鮮度が東京のとは違うのかな。
東京の人は、魚イコール生臭いものだと思ってる。でも、実際魚って生臭くねぇんだって。だから、うちさ来て魚食べれば、みんな「うめ」って言う。生臭いのを美味しいと勘違いしてる人は、うちの魚食ったら物足りない。でもそれは実際違うんだ。
東京に売ってる一番まずいものはタラだと思う。タラ東京で食ったことある?あれアンモニア臭してなかったですか?
筆者:うーんどうだろう。タラってそういうものと思っているから何も感じなかったかも。
青森でタラ食った?
筆者:まだ食べてないんですよ…!
じゃあ今年の冬、ただタラの切り身でも良いはんで、それをたんだ醤油で煮て食ってみへ(ただ醤油だけで煮て食べてみて)。その時に東京で食ったタラ思い出してみて。青森のはアンモニア臭って一切ねぇはんで(一切無いから)。
あるお客さんが最初にタラ食った時、「あ、全然違う。こんな美味しいタラ食ったことない」って。
その人からアンコウの話になって、(青森県)風間浦村のアンコウを仕入れて出したもの食ったっきゃ、「茨城のアンコウより美味い」と。風間浦のアンコウって知られてないんですよ、でも、風間浦のアンコウが自分的には日本一だと思っています。うちはアンコウ採れる時期になったっきゃ(なったら)、お客さんに声かけて仕入れる。一匹まるごと仕入れて「アンコウ入れるよ」って言ったらみんな来るはんで(みんな来るから)。
あど(あと)今みんな待ってるのはハタハタ。最近少なくなってて、去年食べられないお客さんもいた。そのお客さん、今年はもう予約してて!「絶対今年ハタハタかねばまねはんで(食べなきゃだめだから)!」って。青森出身者はハタハタ食いたいって言う人多いね。東京では売ってないはんで。干してるのは売ってるけど、別物だはんでな(別物だからなあ)。
Q.今後の展望をお聞きしてもよろしいでしょうか!
今のこの店が「居酒屋」という雰囲気になってしまっているから、自分としては割烹やコースにこだわってやっていきたい。今よりも小さいお店で自分でその時々に仕入れた美味しい食材だけでつくった料理プラスアルファ郷土料理を入れた、コース仕立ての店をやりたい。
筆者:noteにも書かれていた、もともと家庭料理だった津軽料理をコース料理にするっていうのがすごくいいなと思いました。
夢はそれなんですけども、中々そういうところまで進めないんです。うちはコロナ禍での営業の方が長いんで、東京では実績が無いんですよ。運よくテレビ取材がすごく多いので、その時々はテレビに助けられるんですけど、テレビの反響は短いなと。
青森料理ってのは東京では認知もされてないし、どちらかというと馬鹿にされている部分も結構あると思うんですよ。割烹とも違う、料亭とも違う。青森料理っていうジャンルが無いわけですよ。そのジャンルが無い中で、どうやって自分の店をPRしていくのかってのが今の課題で、一番難しい所です。SNSも慣れてないですし、宣伝するにも勉強不足はあるので。時間が短いんですよね。仕込みもやってバンドもやってってせば。
Q.バンドといえば、着ているのはバンドTシャツですか。なんというバンドですか?
「あっぷるめたる」です。今後テレビ番組にも使われる予定です。どんどん広めてください。Tシャツはギターがりんごです!
Q.つがる市に移住を考えている方にメッセージをお願いします!
人づきあいが苦手な人は結構厳しいだろうね…。あど(あと)、こう、誰にでも話しかけていける人間じゃなかったら青森は厳しいだろうね。だばって絶対懐いていったらみんなめごがってくれるはんで、話しかける人いいだろうな(でも絶対懐いていったらみんな可愛がってくれるから、自分から話しかける人は良いだろうね)。
あとは「持ちつ持たれつ」「もらったらける(もらったらあげる)」。もらったらどったものでもいいはんで返さねば(どんなものでも良いので返さないと)。それが青森県の流儀ってか、もう決まってまってる(決まってしまっている)。もらってばりってことは、あぢのえの人さみんなしゃべる(もらってばかりだということは、周りの家の人はみんなしゃべる)。本人さだば直接しゃべんねえけども、「あそこだっきゃ、わ けたばって、なんもけねぇでゃ(あそこの家は私はものをあげたのに何もくれないじゃん)」って。それで、噂って広まっていくんだって。へば(それで)、良い評判立たねばまいねじゃん(良い評判が立たないのはダメじゃん)。
だんで(だから)、気持ちで良いんだって。高ぇものける必要ねぇんだって(高いものをあげる必要はないんだよ)。自分でつくったものでも良いんだって。「これ自分でつくってみたばって食ってみてけ(自分でつくってみたけど食べてみてね)」って。で、「あとからめがまぐねが教えて。(美味しいか美味しくないか教えて)」とか。それでいいんだって。青森県の人って、食い物知らねぇんだって、本当に。例えば野菜とかも食べ方知らないんだって。そのままでしか食わねぇはんで(から)、投げてまらさる(やむを得ず捨ててしまう)。キュウリだのナスだのしこたま出来るとき、何さすかって(何にするかって)、漬物、サラダ。そういう食い物じゃなくて、例えばピクルスさ(に)してみるとか。青森の野菜農家の人さ(に)東京の人がしかへれる(教えられる)。それは良いと思う。持ちつ持たれつ。「野菜そのものが美味いんだはんで、こうやって食ってもめぇ(美味しい)んだよ」って教えてければいい。
「青森Souls」では青森の郷土料理や新鮮な野菜、海鮮が食べられます。
気になる方はぜひ足を運び、青森を味わってみてください!
写真※季節によってお料理内容が異なります。
青森Souls 店舗情報
住所
東京都江東区亀戸6‐24‐1
アクセス
JR総武線 亀戸駅から徒歩3分
電話
070-4501-1124
営業時間
月、木、金: 16:00~22:00(料理L.O. 21:00 ドリンクL.O. 21:00)
水、祝日、祝前日: 17:00~22:00(料理L.O. 21:00 ドリンクL.O. 21:00)
土、日: 15:00~22:00(料理L.O. 21:00 ドリンクL.O. 21:00)
事前にお電話でご予約の上ご来店お願いいたします。
お一人様2フード2ドリンク制必須
定休日 火曜日(水曜日に変更の場合もありますのでお電話にて確認お願いします)